2009年11月27日金曜日

Mysoundから

2009/11/27 00:57
「名: グローバルな人材派遣会社での悲劇 を消す」
作品ID: 233229 作品の種類: オリジナル曲 登録日: 2009/05/04 公開日: 2009/05/07 サイズ: 10.80 MB ステータス: 公開中 作品詳細情報ジャンル: ポップス 演奏時間: 00:26:57 データ形式: MP3 ビットレート: 56kbps サンプルレート: 22kHz 再生回数今週: 0 累計: 25 2 VGでした。
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2009/11/27 00:58
「Re: 名: グローバルな人材派遣会社での悲劇 を消す」
By 縄文ディラン
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あなたは高卒でトラック運転手をしている。食費を切り詰めて中古のトラックを手に入れた。十歳の息子と妻をかかえた生活は苦しい。あなたの妻は近くのレストランでフルタイムのウエイトレスとして働いている。あるとき息子が骨折をした。手術を受けたあと病院からとどいた請求書の金額はあなたの支払い能力をこえていた。なんとかしようとあなたは消費者金融から借金をする。借金はすぐに膨れ上がった。返済のためにほかの場所から借りる。それを繰り返すうちにあなたの名前が多重債務者リストにのせられたのだ。二〇〇五年八月の暑い午後だった。あなたの携帯電話が鳴った。電話をとると聞き覚えのない声が話し始めた。「はじめまして、クレジットの使用履歴のことですがずいぶんお借り入れのようですね。」あなたは電話を切ろうとする。消費者金融の取り立てはしつこい。いくら着信拒否に登録をしても電話番号を変えてまたかけてくるのだ。ところが今度の相手はこう言った。「実はすばらしいお仕事の話があるんですがね。」聞けば相手は現在急成長中のグローバルな人材派遣会社だという。どうしてあなたの携帯電話番号を知っているのか。あなたのクレジット使用履歴をどうやってしらべたのか。電話の相手はこう言った。「職種はトラックの運転手。年収は初年度から七百十五万円を保証しましょう。」七百十五万円はあなたにとって破格だった。むしろ夢みたいな話ではないか。あなたはたずねる。「おたくの会社に登録するだけでいいんですか。私は高校しか卒業していないのですがそれでその年収が約束されるのでしょうか。」「はい、もちろんです。」相手は答えた。「あなたの運転技術およびバックグラウンドについてはさまざまな場所から情報を得ておりすべて満足のいく結果でございます。給料のことは心配なさらずに登録手続きに必要なパスポートをご用意いただいて会場までお越しいただければと思います。」「パスポート?」あなたは困惑する。生まれてから一度も海外に行ったことがない。「はい、私どもはグローバルな人材派遣会社でございますから、勤務地が海外の場合もございます。もちろんそう長期ではございませんが。」海外と聞いてあなたの胸がたかなる。海の向こうの見知らぬ国で颯爽と働く。家族のために十分稼いで帰国する。そんな父親のみやげ話に目を輝かせる息子の顔が目に浮かぶ。翌朝あなたはパスポート取得の手続きをすませると教えられた登録説明会場を訪れた。会場は色とりどりの風船に飾られていた。壁のポスターに書いてある。「アメリカ政府を支えよう。遠い異国で崇高な使命のために命を捧げている同胞を支える仕事もまた崇高である。」驚くほどたくさんの人々が会場に来ていた。一目見てそれほど豊かな暮らしをしていないとわかる労働者風の男たちばかりに見えた。備え付けのいすに座るとリクルーターが現れて会社の登録システムや条件についての説明を始めた。勤務地は海外であること。今回募集の職種の全てがイラクでのものであること。現地に駐屯する米兵の日常を支えるさまざまな業務につくこと。現地では武装勢力の攻撃によって命を失う可能性もゼロではないこと。勤務時間帯は一日十二時間週七日、休暇は四ヶ月ごとに十日あたえられること。部屋が暗くなりイラクでの労働現場の様子がスクリーンに上映された。「悪くない。」あなたは思う。少なくとも先月まで勤めていた精肉工場よりは、あのいまいましい精肉工場よりはずいぶん清潔そうな環境に見えた。部屋が明るくなりリクルーターが説明を続けた。「最後に一言付け加えさせていただきます。もしもあなたたちが事故でお亡くなりになった場合、可能性は少ないですが化学兵器や放射能でお亡くなりになった場合、遺体の米国への送還はあきらめていただきます。現地で私どもが責任をもって火葬させていただきますので。」会場はざわめいた。リクルーターが話題を給料のことに戻すとまた静かに聴き入った。労働条件は必ずしも良くはない。けれどもこのまま国内でトラック運転手を続けていても借金の返済は利息だけでいつまでも借金はなくならないだろう。息子に自転車も買ってやれない。妻と金のことで喧嘩ばかりしている日々から抜け出すのならばこれが最後のチャンスだろう。登録手続きが始まるとあなたを含めたその場にいた全員が登録を行った。登録から二週間ほどしてあなたは海外での仕事を手に入れた。勤務地はバグダッド。契約期間の一年の間、武器を積んだトラックを運転して毎日四十度近い猛暑の下、兵舎と兵舎の間をあなたは往復する。米兵たちは基地内のペットボトルの水を飲むのにたいし、あなたたち労働者は現地の水を飲むように会社から言われていた。現地の水は米兵が使用する劣化ウラン弾によって放射性物質に汚染されている可能性が高いという。十ヵ月ほどしてあなたは胸に鋭い痛みを覚える。下痢や嘔吐がはじまった。あなたは現地の上司に相談をする。上司は現地の医師を紹介してくれた。医師は「ストレスだ。」と診断をした。黄色い粉薬を処方してくれた。処方された薬を飲んでもなんの効果もあらわれない。下痢には血が混じるようになった。運転中にめまいを覚えるようになった。けれどもあなたは現地の上司に相談しようとはしない。登録説明会場でリクルーターのいった言葉を思い出したから。「化学兵器や放射能で亡くなった場合、米国へは帰れません。」あなたは心を決めた。残りの二ヶ月間をなんとかのりきって生きて米国に帰るほうを選択したのだ。上司には体調が回復したと報告をする。下痢や下血がばれないように毎日細心の注意を払う。地獄のような二ヵ月が過ぎていった。契約期間を終えてあなたは米国に帰った。会社は契約の更新を勧めてきた。体力的に限界だったので断った。約束された年収のすべてがあなたのもとに支払われた。帰国してからもあなたの体調は悪くなるばかり。あなたは病院を訪れた。診断結果は白血病。原因はからだがなにかの放射性物質にさらされたせいだろうという。治療薬は高価だった。派遣で稼いだ給料はあっという間に底をつく。あなたとあなたの家族はアパートを出てトレーラーに移り住む。あなたの妻は今では昼も夜も両方働いている。それでも家族の食費に足りない。政府が提供するフードスタンプによってあなたたち家族は食いつないでいる。あなたはといえば体調はいっこうに良くならない。今では一日中ほとんど寝たきりになってしまった。あなたが登録を行ったグローバルな人材派遣会社の名前は「ケロッグ アンド スミス アンド ルート」社(注 誤り、正しくは「ケロッグ ブラウン アンド ルート」社)という。会社は今も人気で三日毎に約百人が登録をしていくという。

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